2017年12月09日(土) 曳家見学会・旧明村役場庁舎(津市芸濃町林) (車、徒歩)
先日、Facebookページ「守ろう 活かそう 三重の文化財」にて、次の曳家見学会が実施されることを知った。
ここで曳かれる建物は以前に伊勢別街道を歩いた際にその道中で見かけた旧明村役場庁舎だった。
【参考】 2015年09月21日時点
伊勢別街道 ふたり旅、その1/2 2015年09月21日
曳家なんで一生に一度目にすることができるか、できないか? しかも曳かれるのが「旧明村役場庁舎」ならなおさら体感してみたい。また、「大改造!!劇的ビフォーアフター」なるTV番組が大好きで、伊勢別街道歩きにも同行していた【キタヰの妻】に声をかけると二つ返事で「行く!」とのこと。
本日、私は河邊七種神社での古文書勉強会に参加を予定していたが、今回ばかりは曳家体感を優先し急遽、勉強会を休むことにすると芸濃町へ向かった。
午前10時から開始だったため、20分ほど前に現地へ到着すると旧明村役場庁舎はこのような状態になっていた。屋根瓦は降ろされ、窓等が取り外された開口部には内側から合板で補強されていた。
床下には格子状に角形鋼管が配され柱に固定されている。瓦等を降ろして素の状態にされた旧明村役場庁舎はそれでも40〜50トンはあると聞いた。その重さを十数個の台車が支え、曳家の開始を待っていた。
また、敷地の隅には以前の街道歩きの際に見かけた門柱が寂しげに横たえられていた。この子たちも復活するのだろうか。
曳家見学会の参加者向けに準備された仮駐車場(明小学校の校庭)へ車を駐めると
受付でこちらの資料をいただいた。
旧明村役場庁舎は耐震補強工事を終えると文化財建造物としての役目を持ちながら、生涯学習施設・コミュニティ施設等として利活用されるそうだ。(使ってこそ活かされる!)
曳家の作業は2段階で計画されていて今回はその第1弾。
工事現場を見渡すとその隅にはこのようは遊具が解体され、
ブランコを分断するように工事用フェンスが設置されていた。ここも小学校の校庭の一部なんだ。
しばし待機していると
続々と見学者が集まり、かなりの人数になっていた。
開始予定時刻の10時になると担当者からの挨拶、説明の後、曳家作業を担当する作業者からの解説があり
ついに曳家の作業が開始された。
お互いに視線を交わしながら黙々とレバーを前後させる作業者たち。
レバーが激しく動かされても
建物はゆっくりとゆっくりと・・・
その変化を知るにはやはり側面がわかり易い。曳く方向と平行に走る道路にも見学者が集まった。
進行は遅々としているもののこの位置からなら変化がわかり易い。
さらに建物の正面から眺めると数mは曳かれていることを実感できた。
今回の曳家作業を担当していたのはこちら会社だった。
【参考】
- 有限会社西川総合建設(地盤沈下対策・地盤調査・曳家)
- 旧役場庁舎の曳家|有限会社西川総合建設 スタッフブログ
途中で作業が中断された? トラブルが発生したのかと思ったら、ワイヤーの長さを調整しているとのことだった。
しばらく調整が続けられる間、
現場監督の方が工事看板と共に現場写真を撮っていた。
その方に話を伺うと
二台のウィンチを使っているが一台でも対応できる。なおこれくらいなら人力でも十分に曳けるし、ジャッキで押せばもっと早く作業を終えられる。見学者に曳いてもらう案も出されたが安全面を考えた。
今回は見学会なのですぐに終わってしまっても見応えがないため、今回のように二台のウィンチを使用してゆっくりと曳くようにした。
昨日にでも曳家作業を終えられるほどに工程は進捗していたが見学会が予定されていたため一日待ってからの曳家作業となった。さらに2回目の曳家作業は12月14日(木)頃を予定していて来週末には新しい基礎に固定されていることだろう。ただし、2回目の見学会は計画されていない。
今回の曳家作業の費用は約1000万円であり総工費を考慮しても新築した方が安いし、作業する側も気が楽・・・。
などなど興味深い内容だった。
そして、再開の準備が完了すると最後の曳家作業となった。
二人がかりで何度も繰り返して・・・
開始からおよそ一時間で本日の曳家作業は完了となった。
第二回は新しい基礎の上へ移動するため、こちら斜め方向にレールが敷き替えられる。
曳家作業が終了すると作業工程を思い返しながら改めて現場を確認した。レールの下には角形鋼管が井桁状に組まれていたが微妙な高さ調整には薄い合板が使われていた。(鋼板でなくても大丈夫なんだ。)
最後に正面から眺めると変化の大きさは明白。
見学会は終わっても作業は続けられていた。すべてが終わるまで気を抜けない。(お疲れ様です。)
曳家見学に満足した二人は芸濃町を後にすると亀山市へ向かった。
こちらは、津市のホームページに掲載されていた旧明村役場庁舎の保存活用に関する資料他。
【参考】
- 登録有形文化財 旧明村役場庁舎耐震補強その他工事における曳家見学会の開催について(PDF:サイズ約500KB)|津市
- 旧明村役場庁舎保存活用計画(PDF:サイズ約10MB)|津市